【解説編】親の介護に困ったら?生活保護の賢い使い方ガイド
高齢の親に介護が必要となったとき、「お金の心配」がまず頭をよぎる方は多いのではないでしょうか。介護には時間も費用もかかります。そんなとき、知っておきたい制度のひとつが「生活保護」です。
この記事では、親の介護における生活保護の基本から、申請条件、費用のカバー方法、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。
1. 親の介護における生活保護の基本
1-1. 親の介護とは?その必要性と背景
日本では高齢化が進み、介護が必要な高齢者は年々増えています。介護が必要になる主な理由には、認知症、脳卒中、老衰、骨折などがあります。親が一人暮らしの場合、介護が始まると家族の負担が大きくなり、特に金銭面での準備が不十分なケースでは「どう支えたらいいのか」と悩むことも。
そこで頼れる支援制度のひとつが「生活保護」です。生活保護は生活が困難な人を支える最後のセーフティネットとして設けられており、介護もその対象に含まれています。
1-2. 生活保護の目的と制度の概要
生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づき「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。保護の内容には、生活費をまかなう「生活扶助」、医療費を支援する「医療扶助」、そして介護に関する費用をカバーする「介護扶助」などがあります。
高齢の親が要介護状態にあり、かつ経済的に困難な状況であれば、生活保護の対象となる可能性があります。
1-3. 介護サービスを受ける際の生活保護の活用法
生活保護を受けている高齢者は、介護保険制度に基づくサービスを自己負担なしで利用できます(※一部例外あり)。たとえば、訪問介護、デイサービス、ショートステイなども対象です。
ただし、利用には自治体の福祉事務所を通じた手続きが必要です。介護の内容に応じて「介護扶助」が適用されることで、本人の金銭的負担が軽減されます。
2. 生活保護を受けるための条件
2-1. 要介護認定を受けるための流れと必要書類
介護サービスを利用するには、「要介護認定」を受ける必要があります。以下のステップで進みます。
- 市区町村に申請
- 調査員による訪問調査
- 主治医の意見書提出
- 介護認定審査会による判定
- 結果通知(要支援1~2/要介護1~5)
申請に必要なもの:本人の健康保険証、印鑑、主治医情報など。
生活保護を申請する際にも、この要介護認定の有無が大きく影響します。
2-2. 親が生活保護を受ける際の条件と注意点
親が生活保護を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
- 収入や資産が最低生活費以下である
- 扶養義務者(子など)による援助が受けられない、または不十分である
- 働ける能力がない、または働くことが困難
「子どもがいると生活保護は受けられないのでは?」と思う方も多いですが、実際には「扶養照会」のあと、子側が支援できないと判断されれば受給は可能です。
2-3. 世帯分離と生活保護受給の関係
親と同居していると、収入や資産が合算され、生活保護が受けにくくなります。この場合、「世帯分離」という選択肢があります。
たとえば、同じ住所でもキッチンや生活空間が分かれている場合、別世帯として認定されることがあります。ただし、自治体の判断によるため、事前に福祉事務所で相談することが大切です。
3. 介護にかかる費用と生活保護
3-1. 介護サービス利用時の自己負担とは?
通常、介護保険サービスは原則1割~3割の自己負担があります。たとえば、デイサービスを月10回使うと、自己負担が1万~3万円になることも。これが続けば家計に大きな影響を与えます。
生活保護を受けていれば、この自己負担がゼロになる可能性があり、大きな経済的支援になります。
3-2. 介護保険と生活保護の料金軽減方法
生活保護受給者は、以下のような軽減措置があります。
- 介護保険料の免除
- サービス利用時の自己負担免除(介護扶助)
- 通院・入院時の医療費の自己負担もなし(医療扶助)
さらに、「住宅扶助」や「高齢者加算」などの支援もあるため、介護以外の生活も安定しやすくなります。
3-3. 限度額オーバー時の対応と資金捻出方法
介護保険には「支給限度額」があり、それを超えると全額自己負担になります。しかし、生活保護を受けていれば、特別なケースとして「介護補足給付」が適用されることがあります。
また、居宅サービスではなく、施設入所が必要になった場合も「施設介護扶助」が支給されます。費用面の心配がある方は、必ず担当ケアマネや福祉事務所に相談しましょう。
4. 親の介護での生活保護のメリットとデメリット
4-1. 介護扶助のメリットを詳しく解説
介護扶助を活用するメリットは大きく3つです。
- 金銭的な負担が激減する
- 介護サービスの選択肢が広がる
- 本人も家族も精神的に安心できる
とくに、金銭面の心配が少なくなることで、介護の質を下げることなく、本人の希望に沿った生活が実現しやすくなります。
4-2. 生活保護受給によるデメリットとは?
一方で、デメリットも理解しておくことが大切です。
- 申請や更新手続きが煩雑
- 扶養義務者に「照会」がある(心理的負担)
- 一部サービスが制限される場合もある
- 資産があると売却を求められる可能性も
「生活保護」という言葉に抵抗感がある方もいますが、これは国が認めた正当な制度です。必要な人がきちんと利用することは、恥ずかしいことではありません。
4-3. 高額医療費との関係と生活保護の重要性
親が介護とともに高額な医療を必要とする場合、家計への負担は一層大きくなります。しかし、生活保護には「医療扶助」があり、入院・治療費なども支援されます。
とくに、認知症や慢性疾患を抱える方の場合、この医療扶助と介護扶助の両方を活用することで、家族の生活も安定しやすくなります。
まとめ|困ったらまず相談を!生活保護は頼れる制度です
親の介護が必要になったとき、金銭的に苦しい状況でも、生活保護制度を活用することで支援を受けながら介護を続けることができます。
大切なのは、「一人で抱え込まない」こと。迷ったらまず市区町村の福祉事務所や地域包括支援センター、ケアマネージャーに相談しましょう。
生活保護は、親の尊厳ある生活を守り、介護する家族を支えるための大切な制度です。正しい知識を持ち、賢く利用することで、介護生活を少しでも穏やかに過ごせるはずです。
続いては【実践編】です
👉【実践編】親の介護に困ったら?生活保護の賢い使い方ガイド
厚生労働省:生活保護制度
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